緑陰を愉しむ家
東側を道路に面し、間口の広い恵まれた敷地に見えますが、奥に行くほど狭くくびれていく三角形に近い不整形な形です。敷地の奥には覆い被さるように大きな樹木が生えていて、元のお住まいでは湿気や落ち葉に悩まされていたそうです。
南側隣地は企業の管理地になっていて人の出入りもあるため、南に向かって開放的なプランとすることはプライバシーの事を考えると困難でした。そこで大きな窓を設けるのではなく、変形した敷地にあわせて雁行させた平面のそれぞれの面に程よい大きさの窓を設けることで、隣地からの視線をコントロールしやすく考えました。またその部分を吹き抜けとすることで、上部からの採光で必要な明るさを補うとともに、吹き抜けの壁に映える光や、見上げる梢の緑が印象的に感じられる、この家の象徴的な空間としています。
そこでは以前には迷惑な存在だった大樹が、風にそよぐ音や緑陰をもたらしてくれる、この住宅に欠かせないものになりました。
吹き抜けは家全体を結ぶ屋内空間の中心でもあり、家族が何処にいてもその気配を伝えてくれています。
撮影:黒住直臣