緑陰とピアノの家
文学研究者のご主人とピアニストの奥様、ご夫婦のための住まいです。
敷地は小高い丘の上に切り開かれた分譲地の1区画ですが、敷地の奥には丘の下からも見えるほどの大きな樹が数本茂っていて、これらの樹木を借景として日常の生活に取り込む事で、別荘で暮らしているかのような穏やかな住空間を作りたいと考えました。
ピアノを置く部屋には高い天井高が必要とされましたが、家全体のバランスに考慮して屋根を高くするのではなく、スキップフロアのように床を下げる事で空間を確保しました。ダイニングとの間は3連の引き戸で仕切る事が出来ますが、普段は開け放して空間のつながりと視線の抜けを感じられる伸びやかな空間を作り出しています。
ピアノ室の階下はご主人の書斎となっていて、床と天井を作らない事で天井高さを確保しています。基礎の底盤を直接モルタルで仕上げた土間とし、天井も構造を現しにした結果、地下室のような独特の雰囲気を持った部屋となりました。蓄熱暖房器のおかげで冬にも冷え込む事がなく夏も涼しい快適な書斎です。
撮影:黒住直臣