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南台の家

狭小変形敷地を使い尽くした家

 敷地は古い木造家屋の密集した住宅地に在り、決して広くはない三角形の平面と、接道する2面がともに狭隘道路であるため、道路斜線も大変に厳しい条件でした。
限られた面積の中で、常識的な住宅として快適な日常生活が過ごせる最低限の機能に加え、音楽を楽しむ個室と、敷地内に駐車スペースが必要とされました。さらに近接する周辺家屋からプライバシーの守られた、落ち着いて過ごせる内部空間を確保することも重要な課題でした。
 建物の形態は斜線制限をほぼ忠実に再現しています。設計の過程で、限られた空間を使い尽くすために検討を繰り返しましたが、三角形の敷地形状から生まれる不整形な平面と、斜線制限から生まれる傾斜した壁とを不自由無く利用できる用途は限られるため、各室の配置は必然的に定まって行きました。
 玄関へのアプローチ階段を支えるコンクリートの壁は、プライバシーを守る目隠しでありながら太陽光を導くリフレクタとしての役割を持ち、西向きのダイニングに午前中から明るさをもたらすとともに、地下室へ光を導く光庭を構成しています。
また狭隘道路の交差点に建ち、いつ通行する自動車に接触されても不思議のない環境に対しても、コンクリートの壁は視覚的にも安心感を提供しています。
 地下から最上階のロフトまでを貫く螺旋階段は、吹き抜けのように家全体をひとつの空間として結びつけ、また視野を遮らないことで伸びやかな内部空間を演出しています。
その一方で、上下階をつなげることで偏りがちになる熱環境に対しては、パネルヒーターで家全体をコントロールすることでバランスを保っています。

撮影:黒住直臣